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加西の人々

看護師だから知っている、想いが詰まったゲストハウス

岩國万里亜さん

HOJO MACHI HOSTEL

2020.12.14 UP

2019年4月22日にオープンした「HOJO MACHI HOSTEL」。かつて在郷町として発展してきた兵庫県加西市の北条旧市街地にあるゲストハウスだ。もとは病院で看護師をしていたというオーナーの岩國万里亜さん。

「凄くやりがいを感じていた」そう話すように、日中は旦那さんが経営するデイサービスで看護師を続けている。一方で、ゲストハウスへの興味も深まり続けていたとのこと。異なる分野にもかかわらず、どのようなきっかけで「HOJO MACHI HOSTEL」の開業に至ったのか。

みんなが幸せに暮らせるコミュニティを作る

「看護師1年目って土日が休みなんですよ」その頃に出会ったバックパッカーの友達と日本全国いろんな場所へ旅したそうだ。「連泊するので料金が安いゲストハウスに泊まることが多くて。オーナーさんや海外の方と話をしているうちに、ゲストハウス面白いなって想いが芽生えてきたんです」様々な生き方、そして価値観を知る。その当時のわくわく感が表情に出ている岩國さん。

初めは友だちと一緒に旅していたが、楽しさのあまり1人でもゲストハウスを訪ねるようになったという。「学生の頃から友だちの相談に乗ることが多くて。なんで、しんどい思いをしながら働き続けないといけないんだろうか」旅するなかで、そんな疑問と向き合ってきた。

その答えはゲストハウスにあったそう。「オーナーさんの話を聞いてたら凄く楽しいし、海外の人とも友だちになれるし。みんないろんな生き方してるなって」多様な価値観を知るうちにコミュニティづくりにも興味が芽生える。「私がこういう場所を作ったらいいんじゃないか。ゲストハウスに出会ったときは、私がやりたかったことは『これやん!』ってなりましたね」みんなが幸せに暮らせるコミュニティ。「HOJO MACHI HOSTEL」を構成する重要なコンセプトだと感じた。

「加西って他の地域と比べて飛び出た何かがあるわけじゃないから、自分が今から何かを始めたら、その波に乗れるかなって」加西市を好きになり、結婚もした。「自分も一生ここで生活していくことが決まったから。じゃあ、加西を良くすることを考えよう。自分たちが住みやすいように、自分たちが楽しくなるように。そんな世界を作ったらいいんじゃないか。」心優しい温かな言葉に、自然と和やかな雰囲気になる。

いろんな世代に泊まってほしくて

もとは洋服店だったという「HOJO MACHI HOSTEL」のテナント。長年シャッターが閉ざされていた空き家を「NPO法人 ZIBASAN」がリノベーションした。補助金の申請をはじめ、ゲストハウス開業に向けて様々なサポートもしてくださった。実際に設計を進めるにあたり、岩國さんは「こんな人に泊まってほしい」という大まかなイメージを伝えたという。

「MOKU」「TUTI」「WAFU」の3種類の部屋。ドミトリールームの「MOKU」のお部屋は2段ベッドが並ぶポップな雰囲気が印象的だ。「最初は一人旅のバックパッカーやビジネスマンの方に泊まってもらってたんですけど、最近はお子様連れのご家族が貸し切りにされることも多くなっています」一方で「TUTI」の部屋。旅する女性グループをイメージした。「WAFU」は純日本らしい部屋となっている。「もともと床の間が綺麗だったので、ほとんど弄らず残してもらいました」年配のご夫婦や海外の方を想定したのだろうか。畳の部屋ならではの落ち着いた雰囲気が印象深かった。

「そんな感じで部屋ごとにコンセプト、泊まってほしいターゲットを変えてて、いろんな世代、いろんな人に泊まってほしいっていう想いがあります」開業に向けてクラウドファンディングも活用した。「最初にご支援してくださった方は、オープン当初から何度も宿泊してくださっているリピーターさん」どうやらファンづくりも目的だったようだ。「意外とクラウドファンディングって出ていくものが多くて、資金集めというよりかは全国いろんな人に知ってもらいたかった」ゲストハウスのコンセプトである「Crosetta(クロチェッタ)」。様々な世代、国籍の方々が「交差する」ために、開業当初から工夫を凝らしているわけだ。

看護師だから、知ってるからこその気遣いができる

「看護師だからこそ気付けることもあるんです」看護師とゲストハウスのオーナー。一見すると共通点のない両者の仕事。その一言に驚く。「清潔や不潔に対してシビア。コロナに関係なく、お客様とスタッフの感染予防に徹しています」看護学生の頃からベッドメイキングも経験。実際に「TUTI」の部屋で実演してもらった。「シーツ1つを作るにしても、お客様にリネンのタグや縫い目、折り目が当たらないようにする。一般の人は知らない、知ってるからこその気遣いができる」細部にまで心配りが行き届いている。

2階にはお洒落なキッチンスペースがある。そこにある1冊のノート。お客様からのメッセージが記されている。「最初は『お布団がふわふわ』って書いてある人が多かった」これまでのお客様を思い出すかのようにノートをめくる岩國さん。ホスピタリティという言葉に目が留まる。「他には『私も自分の夢を実現できるように頑張っていきたいです』とか」

何かやりたいことがある方に、チャレンジの場を紹介できるところ。「HOJO MACHI HOSTEL」のこだわりだ。「お菓子屋さんをしたいって方がいらっしゃって、その方には北条conneの出店をおすすめしたり。何か一歩を踏み出したい方にはいい宿かな」1から始めた岩國さんだからこそ、こうしたかかわりができるのだろう。「そうしたお客様がいらっしゃったときは、めっちゃ話しますね。3時間くらい」看護師を経験してきた。人となりに寄り添いながら、より深くコミュニケーションを取る。岩國さんの魅力だと感じた。

海が好き、海が見えるゲストハウスを

加西でゲストハウスを始めた理由。「地元っていうこともあった。一緒になって協力してくれる、そんな仲間がたくさんいる。地元だから選んだ」しかし、はじめは海の見える物件を探していたという。「海が好き。両親が海好きで。お母さんのお腹の中にいる頃から毎年、京丹後の久美浜に行ってて、家族の幸せな思い出が海にあったんで」悩みがあったときは、海へ癒されに行っていたそうだ。

「以前、いい物件もあったんですが、仲間のいない土地で挑戦する勇気が出なくて」だが、想いは続いている。「今でも海が見えるところでゲストハウスをやってみたい。いつかは海の側で暮らしてみたいので」今後のチャレンジを楽しそうに話す岩國さん。

青色の布地に大きなロゴ。全面ガラス張りに映える少しばかり大きな暖簾をかけて、今日もまた人々が、そして想いが交差していく。ゆったりとたたずむ温かなゲストハウスに、明日はどんなお客様がいらっしゃるのだろうか。今後の展開に目が離せない。


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