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加西の人々

伸びしろは無限大 子どももママも、そして自分も

下村紗織さん

baby&MamaサークルClap 代表

2020.12.14 UP

「0才から集える場をつくりたかったんです。ママのためにも、子どものためにも」。
意志の強そうなひとみが印象的な下村紗織さんは、4才と3才の2児の母。「0才からのこども教室」を経営するかたわら、子育てママのためのサークル「baby&MamaサークルClap」の代表を務める。

信念を土台に、こだわりを積み重ねた「こども教室」

結婚を機に、神戸から加西に移り住んだ。学生時代に究めた語学を活かして英語教室をはじめたのは、学校に行きづらくなった子どもに英語を教えてほしいという友人の依頼がきっかけだった。「何かひとつでも自信を持たせてあげたい」と、その子のためだけのカリキュラムをつくり、教材の研究もした。

その後、長女を出産し、こんな思いが芽生えた。「自分が育った時代とこの子が生きる時代はちがう。育て方もちがって当然。自分は母親として何をしてあげられるだろう?」。
数々の育児書を読みあさり勉強会に参加するなかで、おなかにストンと落ちたのが「モンテッソーリ教育」だった。イタリアの女性医師マリア・モンテッソーリによって考案された、子どもの自発的な成長を尊重し自分で考える力を育む教育メソッドだ。

家庭内で実践し、手ごたえを感じた。モンテッソーリを地域でも広めたい―そう思ったらもう、一直線。協会の認定講師の資格を取得し、コミュニケーションに重きを置いた英語教室との2本柱で「0才からのこども教室」を開校したのは、2018年2月のこと。

不安はなかった?という問いに、「なかったですね。自分で学んで実感したことに信念を持っていたから」と力強い答えが返ってきた。
「子どもは常に成長しようとしています。もちろん、0才でも。大人の役目は、発達段階に応じてその成長を手伝ってあげること。だから、教室名に『0才からの』とつけたんです」。その考えかたを軸に、想像力を養うアート教室とリトミック教室もおこなっている。

一人ひとりに合った手厚いサポートが自慢の教室では、子どもが安心して自分を表現できる環境を整え、懇談や参観日を設けてママの不安にも寄り添う。
「わたし、こだわりが強すぎて……いつもつまずいてますよ(笑) でも、そこが強みでもあるのかな」。自信を湛えた、すがすがしい笑顔。“こだわり”の積み重ねこそが、信頼と実績を築き上げてきた。

子どもが成長するように、模索しながら未来を描く

築いてきたものを大切にしながら、常に自分にできることを模索中だ。

障害児の放課後支援に携わっていた経験から、発達障害の特性を持っていながら明確に診断されるに至らない「グレーゾーン」と呼ばれる子どもの支援にも力を入れたいと話す。「大人数の教室ではなじめなくても、ここではその子にあわせた指導ができます。お母さんにあきらめてほしくないんです」。下村さんの語り口調が強くなる。きっと思い入れがあるのだろう。

後継者を育てることも、近い将来の目標だ。「わたし自身がもっと知識を深めたくて。クラスを任せられる人がいてくれたら、そのあいだに勉強できるじゃないですか」。その向上心の高さに圧倒される。

「教室を、子どものお勉強の場だけでなく、ママもいっしょに成長できる場、つながりが生まれる場にしていけたら」 。
アート教室で好評だという、からだ全体を使って大きな紙に絵を描く「自由アート」を見せてもらった。のびのびと描かれたこの絵のように、子どもが自ら伸びようとするように、下村さんも自身のなかに未来を描いている。

ママと地域を思う気持ちから生まれた子育てサークル「Clap」

つながり。そのキーワードから、話題は子育てサークル「Clap(クラップ)」へと移る。「わたしのイチオシなんです」。おいしいお店を見つけたときのような笑顔で、そう話しくれるから、思わず身を乗り出して聞き入ってしまう。

加西に住んで7年。肌で感じていたことがある。住みやすいまちだが、0才児を気軽に連れて行ける場所が意外にも少なく、同じママ世代の地域への関心が薄い。それってなんでだろう?と考えた先に思いついたのが、子育てサークルの立ち上げだ。

「産休育休の期間って、家にいる時間が長いぶん地域のことを知るチャンスだと思うんですよ。でも出産後は、なかなか外に出られず家にこもりがち。産後うつになる人も多いと聞きます。育休が明ければ、地元をじっくり知る時間もないまま仕事に復帰することになるし…。だったら、子ども連れのママが集まって、悩みの共有やたわいもない話ができるコミュニティをつくろうと思ったんです」。
ママと地域を思う気持ちがふくらみ、2020年6月に「Clap」が産声をあげた。

サークルには、妊娠中から、子どもが1才の年度終わりを迎えるまでのあいだ在籍できる。下村さんをはじめ5名の現役ママが主となり、2週間に1回のペースで絵本の読み聞かせや音楽遊び、ハイキングなどを開催。子どもが飽きない工夫をしている。専門的なことを知りたいときは、専門家へつないでくれるのも心強い。

現在の会員は約30人。疲れた表情でやってきたママたちが笑顔になっていくのが、心からうれしい。「ここがあってよかった」その声が原動力になる。
サークルの信頼を確固たるものにするため、今後は行政との連携も視野に入れているという。今はまだよちよち歩きの「Clap」だが、これからの成長が楽しみだ。

取材に同席してくれた2人のお子さんに柔和なまなざしを向けながら言う。
「加西は都会すぎず田舎すぎず、“何かをはじめる”のにちょうどいいまち。教室もサークルも、このまちだからこそやってみようと思えました。子育てしやすいという魅力がプラスされたら、きっと人も増えるんじゃないかな」。
彼女の伸びしろが、地域の伸びしろにつながっていくような気がした。


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