“夢”に向かって走る「アジアンキッチンTantra」の手作りキッチンカー
田居史江さん
アジアンキッチンTantra
2020.12.21 UP
淡い黄色の外装、水色の曼荼羅が特徴のキッチンカー。「一番のこだわりは外見。そこまで上手に塗っている訳じゃないけど、色の組み合わせで楽しい雰囲気になるかなって。自分で選んでデザインしました」柔和な笑顔で話す田居史江さん。「アジアンキッチンTantra」のオーナーとしてナンバーガーを販売している。
たくさんの人に愛される工夫を凝らす
キッチンカーで初出店したのは、2020年6月23日のこと。加西市のフリーマーケットに参加したそうだ。「記念すべき日なんです」と初出店のことを鮮明に記憶する姿が印象に残る。その後、多くの「ご縁」をいただきながら様々な場所へ走っていく。知り合いの警備会社の社長さんとキッチンカーを並べたイベントを企画したり、お客さんからグランピング施設のイベントに誘ってもらったりしたそうだ。
人気のメニューはインド料理を組み合わせたタンドリーチキンバーガー。「でも、インド料理が合わない人もいる。いろんな人の意見を聞いて、試行錯誤をしているんですけど……」こだわりのものを作ると同時に、知名度を上げようと試みた。子どもでも食べやすいソーセージをはさんだナンバーガーを作ってみたり、アジアンな雰囲気になるようラッシーを販売してみたり。使用する食材も地元兵庫のトマトなど、安心して食べられる工夫を凝らす。
想いが詰まった手作りのキッチンカー
実は栃木県にある中古車を改造した手作りのキッチンカーだという。「みんなで集まって改造ワークショップをするつもりが、トラックが届かない連絡がきて……」思い立ったら即行動が田居さんらしい。「初めて乗ったときは怖かったな」と言いながらも、栃木県から加西市までの片道約700㎞をドライブした。
改造は2ヵ月にも及んだ。その間、友だちをはじめ、たくさんの人たちに手伝ってもらったという。もとは宅急便で使用されていたトラック。荷物で壁は凹み、伝票も貼られていた。「皆で伝票を削ったり、ベルトを固定するための金具を外したり、そんなところから始まりました」少しでも楽しい雰囲気になるよう、ピクニック形式でご飯を食べたそうだ。
田居さんのこだわりは外装だけではない。「作業効率が悪くならないように、キッチンカーの幅に合わせた業務用の冷蔵庫を置いています。あとはインドの人が使うタンドールも」家庭でナンを焼く場合、オープンやフライパンを使用する。だが、「アジアンキッチンTantra」ではタンドールという専用の窯を使って、こんがりとナンを焼き上げている。
もちろんお店の名前にもこだわりが。「タンドールのトラックでタントラ」インドの経典や田居さんの寅年も掛けている「Tantra」。経典の教えである「解放」はキッチンカーのマークと関係している。「水の波紋のようでもあり、曼荼羅みたいでもある。世界が愛に溢れるようにハートを入れています」
田居さんの想いが詰まったキッチンカー。あらゆる面で心配りが行き届いている。
様々な経験を積み重ねて
もともとは大阪のケーキ屋さんで働いていた田居さん。多忙な日々にモチベーションを保つことが難しくなり、出身地である加西市に戻ってくることに。「失敗は駄目だと思っていたけど、一度挫折したら開き直って、ダメもとでやってみてもいいかなって」漫画家になる夢を思い出し、小野市にある知り合いのケーキ屋さんで働きながら、漫画の勉強もスタートさせた。
新たな情熱を見出し、ケーキ屋さんでも多くの繋がりを築いていく。ケーキ屋さんで独立を考えるようになった6、7年前。ナンバーガーのきっかけとなる「ムナール」という加西のカレー屋さんに出会う。「海外って行ったことなかったけど、漫画好きの私は、その未知の世界に興味をもって、いろんな話を聞きに行ったんですよね」何度かお店を訪ねるうちに、気が付けば「ムナール」のお手伝いをすることになる。
「その頃のお店ってなんだかカオスな感じがして……」ただ料理は美味しかった。だったらお店を盛り上げるためにチャレンジしてみよう。昨年の12月までの約5年間、お店を支えるべく精力的にかかわる。「ランチセットのメニューを変えたり、小さく切ったナンをお店の前で渡してみたり」ネパールの「ダサイン」というお祭りをヒントに、バイキング形式のディナーショーも企画したそうだ。
自分の力を試してみる、夢の“温泉リゾート計画”
チャレンジを続ける一方で、悩むこともあったという。「いろんなことをやってきたけど、なんかこう満たされない。本当にやりたいことが出来ていない」気分が沈むこともあったと言うが、自分自身と向き合うことで新たな夢を発見する。「なんて私は駄目なんだろうって、そういうことばかり考えてたんです。でも、自分で思い込んでただけやん!って発見することができて。ムナールさんでも、この人の役に立たないと!って思ってきたから。なら、それも置いておいて1人でチャレンジしてみようと思ったんです」
その夢こそ加西とネパールの温泉リゾートだ。「駄目かもしれないし、実現できるかもしれない。可能性があるよって、0%ではないから。自分の人生でチャレンジしてみようって!」温泉リゾートに訪れる人たちが笑顔でお風呂に入り、レストランで美味しいご飯を食べる。壮大な夢を実現するべく、目標である2030年に向けて動き出す。
「このくらい大きなことするんだったら、日本中、海外の人にも知ってもらわないといけない。じゃあ、手っ取り早く知ってもらうために自分がそこに行って、いろんな人に合って、想いを届けていけばいいと思って。タイヤが付いているお店を作りました」夢を語る田居さんの表情は、自信に満ちた笑顔だった。
温泉リゾート計画。さらに多くの人たちに知ってもらうべく、2台目のキッチンカーも視野に入れているそうだ。もとはレストランとして活用されていた「ドライブインいいもり」の跡地。実店舗の構想や資金に目処が立てば、店内を改装してナンバーガーや知人のハンドメイド作品を販売していきたいと語る。
昔は大嫌いだった加西、でも今は……。
多くの繋がりを築き、支えあってきた田居さん。今、加西にいる理由を尋ねると「加西で出会う人みんな、良い人ばかりだから。他の所に行きたいと思わないんですよね」加西愛を感じる一言。しかし、意外なことに昔は加西のことが大嫌いだったという。
「小学生とか高校生の頃とか引きこもっていて、ずっと家ばかりにいたんですね。加西何もないし!って。自分のこと棚に上げて誰かのせいにしていた。でも、良い人もいっぱいいるし、加西何もなくないやん!って」加西の良さは、実際に住んで経験してほしいとのこと。「一言でまとめたくない」深めてきた関係性があるからこそ、出てくる言葉だと思った。
田居さんの人生を使ったプロジェクト「加西とネパールの温泉リゾート」。新たな出会い、想いを繋げていくために。ナンバーガーと夢を乗せ「Tantra」を走らせる。