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加西の人々

地域とクリエイターのために、漕ぎ進んでいく

辻田聡信さん

地域おこし協力隊

2020.12.14 UP

落ち着いた話し方に、常に物事を俯瞰して見ている姿勢。“淡々と”という表現が似合う男性、それが辻田聡信さんの第一印象だった。

出身地である京都を離れ、加西で地域おこし協力隊になって3年目。現在はデザインの仕事をしながら、北条旧市街地の月末土曜イベント「北条conne(コンネ)」や、「アウトドアで遊び心のある体験」をコンセプトとする団体「KAP(Kasai Asobi Project)」の代表なども務める。

チャレンジを受け入れる土壌があるまち、加西

辻田さんの現在の活動は、これまでにやってきたこととはまったく関係ないことばかりなのだそう。デザインも、イベントの企画も、アウトドア活動も新しいチャレンジだ。

「地域おこし協力隊になってから、いろんなことにチャレンジしていますね。それは加西に“チャレンジを受け入れる土壌”があったからなのかも。でもなんとなく、やっておくべきだろうなと思ったことに取り組んでいる感じです(笑)」

加西には、がんばっている若者がいる。それを応援するベテラン世代もいて、皆が対話できる場もある。これから挑戦する者にとって、応援してくれる上の世代と直接対話できるのは心強い。

もっと田舎の土地なら、特有のしがらみや新しいことを受け入れない空気だってあるかもしれない。だが、このまちにはその空気がほとんどない。だからこそ今、“何か始めたい人”が集まってきているのだろう。

加西と出会って、まちづくりを考えた

加西との出会いは、当時受講していた大阪のカフェ開業専門スクール「Cafe’s LIFE」で加西市とのタイアップ企画が行われていたこと。それまで知らなかった加西市の存在を、ここで初めて知った。

「そこで行われたビジネスプランコンテストで、加西のまちづくりプランを出したら2位になって。それがなんか悔しかった。そこから、まちづくりという枠組みで何か自分にできることがあるんじゃないか? と協力隊に入ることを考えました」

もともとは興味のなかったまちづくりに、直感がはたらく。ただ、協力隊として活動するなら加西市で。他の地域で活動することは考えなかったのだそう。

加西のために自分は何ができるだろう? 自分の力ってどういうものだろう?この直感を行動に移すのは、きっと勇気がいるものだ。それでも辻田さんは淡々と前に進んでいく。

自らの足で漕ぎ進んでいく

協力隊に入ってすぐの頃、「かさい観光Navi」サイト内に掲載する北条鉄道の駅からめぐる観光ガイド記事を作成。取材のためにまちを自転車で駆けめぐり、訪れた加西アルプス(善防山・笠松山)のダイナミックな魅力に気付いた。

代表を務める「KAP」では、野菜づくりやキャンプなどといったアウトドアイベントを行っている。

しかし、性格はインドア派なのだという。もともとハイキングが好きだったのかと聞けば、「全然」。意外だ。こんなにアクティブな活動ばかりしているのに?

「でも、“漕ぐ”ことが好きなんですよね。自転車とかボートとか。人力で進んで、風景が変わっていくのがいい」なるほど、ここに辻田さんの原動力がありそうだ。

自分の力でやってみて、レベルアップするのが好きだとも語ってくれた。経験のないことでも果敢にチャレンジし、自らの足でペダルを漕ぐように前へ前へと進む。その姿は、周りで見ている者の背中を押していくのだ。

モチベーションは「人のため、誰かのため」

「僕のモチベーションは、“人のため、誰かのため”。自分の利益のためには動けない。この性格だと自覚したのは最近なんですけどね」

大学を卒業後、さまざまな仕事を経験してきた。自分で設計した家を建てたこともある。それらは自分の自信になっているけれど、でも何かが違う。

協力隊では、それまでの暮らしでは考えることのなかった「地域のため、人のため」に活動することになる。

「自分の芯となる部分が見つからなくて、フラフラしていた」辻田さんにとって、地域おこし協力隊は大きな転機だった。「人のために」が自分のモチベーションなのだと気付くきっかけにもなった。

まだまだこれから、地域とクリエイターのために

そもそもカフェスクールに行っていたのは、コーヒースタンドのある雑貨店を自分の店として持ちたかったからだった。加西に来てからも、コーヒースタンドを運営しながらデザインの仕事を、と考えていた。

もしもその考え通りにしていたら、インドア派な性格から地域と関わらず内にこもっていたかもしれない。

「それはもったいないですよね。地域との関わりをなくさず、デザインと地域を絡めて活動するのが、協力隊として残り数か月の僕がやるべきことかなと思っています」

今後は、北条conneを広げていきたいと考えている。

「自分がコンネでクリエイターとして活動したことは、次につながるきっかけにもなった。だから、クリエイターの集まる場にもなればと思っています。やりたいことをやって、仕事につながる。その場をつくることが恩返しになるかな」

辻田さんの想いは北条conneだけに留まらず、地域の良さも発信していく。まずは加西でさまざまな動きが起こっていることが伝われば、おもしろそうだと感じたクリエイターが集まってくるかもしれない。

「44歳、まだまだこれから。まだいける気がする。ずっと『大器晩成型』と言われていたけれど、ああ、ここか!と納得した感じ(笑)」

協力隊の任期は2021年の春までと、すぐそこに迫っている。だが、これからも辻田さんは自らの足でペダルを漕ぎ、淡々と前に進み続けていく。そのハンドルを切る先にはきっと、地域でクリエイターが輝く未来が待っているはずだ。


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